第112話

普段のゲイリーは一筋縄ではいかない人物で、どこへ行っても称賛を浴び、会話の中心にいるような男だった。だが今、状況は一変していた。

やがてゲイリーでさえ語るべき言葉を失い、物思いに沈んだような眼差しで、ただ入口の方をちらりと見ただけだった。

ベンジャミンは上の空で、人差し指でテーブルをトントンと叩いていた。まるで忍耐が切れかけているかのようだった。

ベンジャミンの忍耐がいよいよ限界に達しようとしたその時、ついに二つの人影が入口に現れた。

まだ時間が早かったため、パロマ家の人間はほとんど到着しておらず、現在この場にいるのはゲイリーだけだった。

ベンジャミンの視線が入口へと移る。視界の端に...

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