第140話

朝、マルティナが目を覚ますと、ベンジャミンの姿はどこにもなかった。いつ起き出したのか見当もつかない。あんな体の状態だというのに、彼は休むつもりなどなさそうだった。

マルティナは少し考えた末、彼にメッセージを送ることにした。「仕事をしてるの? お医者様には安静にするように言われたはずよ」

部屋の外では、ベンジャミンが朝食の支度を整えていた。マルティナの好物を、心を込めて選び抜いた品々だ。

かつての彼は、人の気遣い方など知らず、そのせいで失敗もしてきた。だが、これまでの時間と努力を経て、今では誰よりもマルティナのことを理解できるまでになっていた。

彼女の好みや習慣を熟知し、細やかに気を配る...

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