第32話

ベンジャミンは常に仕事に追われているため、日々の睡眠時間は極端に短かった。

一日に五時間も眠れれば、それはもう彼の許容量を超えていると言っていい。大抵の場合、睡眠時間は二、三時間程度だ。

深夜まで起きているにもかかわらず、早朝には目を覚まし、生活の全てが慌ただしい仕事で埋め尽くされている。

マルティナの情緒が不安定になっていることに気づかないことがあったとしても、それは無理もない話だった。

普段なら、ベンジャミンは午前六時頃に起床し、すぐさま身支度を整えて仕事の海へと飛び込んでいく。

だが今日は、マルティナを連れ戻しに行くという予定があるせいか、いつもより三十分も早く目を覚ましていた。

ベ...