第53話

村人たちは、ベンジャミンたちが去っていく方向をじっと見つめていた。彼らが実際に船に乗り込み、離れていくのを見て、ようやく安堵の息をついた。

だが、その様子を見送る村長の表情は晴れず、疑念は消えていなかった。

ある村人が、誰かに聞かれるのを恐れるように声を潜めて言った。「村長、これからどうしたらいいでしょう? あいつら、また戻ってきて悪さをするんじゃ……」

別の村人が横から口を挟んだ。「今回の引き際、あまりにもあっさりしすぎてやしないか? 何か悪巧みをしていて、わざと素直に帰ったふりをしているだけかもしれないぞ」

「もしあいつらの行動が、マルティネス先生にまで及ぶようなことになったら、俺...

ログインして続きを読む