第59話

だが、以前ベンジャミンの前で口にしたのは、カールスバッドに行きたいということだけだったはずだ。韓国に行きたいなどと、いつ言っただろうか?

突然、あることに思い当たったマルティナの表情が、一瞬にして暗く沈んだ。

まるで確証を掴んだかのような、迷いのない声で彼女は尋ねた。「私の日記を読んだの?」

それ以外に、ベンジャミンが自分のことを詳しく知る方法など、マルティナには思いつかなかった。

かつて気分が沈んだ時、彼女は日記に想いを綴るのを好んでいたため、そこには彼女の胸の内が多く記されていたのだ。

そこには、長年にわたる彼女の努力や、それに見合わぬ報われない結果、そして些細な願い事までもが書...

ログインして続きを読む