第8章
白峰市工業地帯の製鉄所の外では、秋の日差しが容赦なく照りつけていた。直哉が額の汗を拭い、タイムカードを切ろうとしたその時、現場監督が近づいてきた。
「早川、お前はクビだ」
「え?」直哉は信じられないといった様子で現場監督を見つめた。「どうしてです? 俺の仕事ぶりはいつも……」
現場監督は気まずそうに視線をそらした。「上からの命令だ。俺にはどうすることもできん。荷物をまとめろ」
直哉の手が微かに震えた。この仕事は過酷ではあったが、安定した給料、彼と由紀の未来を築くための土台を与えてくれていた。これが偶然でないことは分かっていた。
南区の小さな自室に戻り、直哉が腰を下ろすか下ろ...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
縮小
拡大
