第269章 旧情を顧みる

少し躊躇したものの、彼女はスマートフォンを手に取り、通話ボタンをタップした。

「もしもし」

白石凛の声は氷のように冷え切っていた。

名義上は母娘とはいえ、年村理理というこの「母親」のこれまでの所業は、とうの昔に凛の心を粉々に砕いていた。だからこそ、凛の胸の内に彼女への愛情など微塵も残っていない。

「凛……」

電話の向こうから聞こえる理理の声は、妙に愛想が良かった。

「何か用」

凛の声はさらに温度を下げた。

「凛、私たちはどうあれ親子じゃない。ここ数年、確かに私は美夕を少し贔屓してきたかもしれないけれど、あなたにも私の立場を分かってほしいのよ。美夕はあなたの妹だし、私たち母娘は...

ログインして続きを読む