第114章 お前のようなクズ

一方、氷室龍一を取り巻く空気は、喧騒とは無縁の異質なものだった。

氷室龍一は一人ではない。比較的静かなボックス席で、地味な身なりながらも強烈なオーラを放つ数名の中年男女と同席していた。

もしここにベテランの経済評論家がいれば、彼らが複数のオフショアファンドや多国籍財閥を牛耳る重要人物であることに即座に気づくだろう。

彼らが交わしているのは、浮ついた色恋沙汰などではない。

桁外れの資本操作、国境を越えた企業買収、そしてセンシティブな領域に関わる「資産のホワイト化」への道筋――。

氷室龍一はソファの背にゆったりと身を預け、指先でクリスタルグラスの側面を軽く叩いている。口数こそ少ないが、...

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