第120章 温泉の旅

トリを飾ったこのルビーのネックレスは、正体不明のミステリアスな買い手によって、会場がどよめくほどの破格の値段で落札された。

その人物は取引を終えるや否や、誰とも言葉を交わすことなく、影のように静まり返ったまま会場を後にした。

「どこの大物かしらね」

智子が感嘆の声を漏らす。

「あの羽振りの良さ、只者じゃないわ」

綾瀬美月も少なからず驚いたが、それ以上深く考えることはしなかった。

最高級のオークションともなれば、世間に名の知られていない隠れた富豪の一人や二人、珍しくもないことだ。

オークションが終了し、綾瀬美月は落札したカフスボタンを手に、母と智子と共に会場を出た。

出口に差し...

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