第126章 身代わり

ベタは、彼女の斜め向かいにある一人掛けのソファに腰を下ろしていた。

背筋を伸ばし、光と影に切り取られたその横顔の輪郭は、橘奏太と驚くほどよく似ていた。特に、その高く通った鼻梁と、鮮明な顎のラインは瓜二つと言っていい。

だが、彼は伏し目がちに、手つかずのまま置かれた目の前のウィスキーを黙って見つめていた。その全身は、目に見えない重苦しい抑圧に包まれているようだった。

「何、呆っとしてるの?」

橘リカは紫煙を吐き出すと、気怠げな冷たさを孕んだ声で命じた。

「お酒、注いで」

ベタが顔を上げる。その目の形こそ橘奏太に似ていたが、瞳の色はより深く、そこには橘奏太特有の他者を寄せ付けない気高...

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