第137章 なぜ抱き合って寝ているのか

綾瀬美月はハッと我に返ると、手と足が一緒に出るようなぎこちない動きでロッカーからタオルを掴み取った。背後にいる彼を振り返る勇気など、微塵もない。

今夜、何かが音を立てて崩れ去ろうとしている。あの危険で、どこか艶めかしい境界線が、静かに破られようとしているのを彼女は鮮明に感じ取っていた。

そして、その元凶である男は、獲物が自ら網にかかるのを余裕しゃくしゃくで待ち構えているのだ。

綾瀬美月は逃げるように、一度も振り返ることなく寝室へと飛び込んだ。

***

深夜。静まり返ったリビングには、紗のカーテンを透かして月光が差し込み、床に淡い光の輪を描いていた。

喉の渇きを覚えた綾瀬美月は、音...

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