第169章 傲慢な淑女

「ハル君が、カイロで火傷をした!」

 その知らせを受けた瞬間、綾瀬美月の心臓は早鐘を打った。

 抱えていた仕事も思考もすべて吹き飛び、彼女は車のキーをひっつかむと、ほとんどオフィスを飛び出すようにして駆け出した。

「すぐ行きます! ひどいの?」

『応急処置は済ませたが……とにかく、急いで来てくれ』

 電話越しの佐京潤の声は、深い罪悪感に濡れていた。

 車を飛ばしながら、美月の胸はきりきりと締め付けられるようだった。

 綾瀬陽はまだ幼いとはいえ、機械いじりに関しては大人顔負けの集中力と慎重さを持っている。そんな子が、たかがカイロで不注意に火傷をするだろうか?

 佐京教授のスタジ...

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