第264章 デイヴィの嗜好

「いえいえ、とんでもないですよ。これは私の職務ですから」

デイヴィは満面の笑みを浮かべ、手にしたグラスを一気にあおった。いかにも豪胆といった仕草だ。

「健全で公正なビジネス環境を守るのは、本来われわれの責務です。それに――綾瀬様のような優秀な経営者には、より伸び伸びとご活躍いただける土壌があるべきでしょう」

言葉を交わすあいだ、彼の視線はことあるごとに綾瀬美月の上をさまよった。

そこに宿る賞賛は、今にもこぼれ落ちそうなほど濃い。だが、ギリギリのところで節度は保たれており、表立って非難できるようなところはない。

だからこそ、美月はどうしても居心地の悪さを拭えずにいた。

こうして、表...

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