第265章 選挙に参加する

「龍一」

彼女は彼の胸にもたれたまま、そっと声を落とした。

「ねえ……あなた、自分で選挙に出てみようって、考えたことはない?」

氷室龍一は思わず瞬きをした。

そんな発想は、今まで一度たりとも自分の中に芽生えたことがない。

彼の世界を成り立たせているのは、常に純度の高い「力」だけ。

表の政治の、駆け引きとパフォーマンスで塗り固められた茶番など、複雑で非効率なものにしか見えなかった。

「選挙?」

軽く片眉を上げ、意外そうに綾瀬美月を見下ろす。

「うん」

綾瀬美月は顔を上げ、真っ直ぐ見つめ返してきた。

「今のあなたの影響力って、もうビジネスの枠だけに収まってないでしょう? も...

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