第32章 俺が助けてやる

だが、髙野拓海は不意に一歩踏み出すと、彼女の手首を逆に掴み返した。

掌はひやりと冷たい。力は強すぎも弱すぎもしない。ただ、芽衣が振りほどけない程度には、しっかりと。

芽衣ははっと目を上げる。警戒と戸惑いを滲ませたその視線が、彼の深く読めない瞳にぶつかった。

髙野拓海は目を伏せたまま、彼女の顔をじっと見据える。夕風の中でも、その低い声は妙にはっきりと耳に届いた。かすかな探るような色を含んでいる。

「どこへ行くつもりだ」

夜露を含んだ風が、ひんやりと芽衣の赤くなった耳朶を撫でていく。彼女は手首を軽く引き、距離を置くような声で言った。

「髙野拓海、私がどこへ行こうと勝手でしょう」

さ...

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