第1章

藤沢茜視点

周囲のクリスタルグラスの中でシャンパンの泡が立ち上り、会場は上品な会話と控えめな笑い声でざわめいている。B市芸術大学、年に一度の展覧会、その特別招待内覧会――一年で最も苦手な夜の一つだ。

私は展示ホールの一角に身を潜め、シャンパングラスを固く握りしめながら、部屋の向こうにいる高田真琴を見つめている。

彼はある女性と一枚の油絵の前に立っている。息をのむほどの、美しい女性だ。

彼女は黒いシルクのドレスをまとい、黒髪は優雅なシニヨンにまとめられている。その身のこなしには、私には到底持ち得ない自信が満ちあふれていた。今、彼女は真琴に身を寄せ、その細い指でキャンバスを指さしている。

「この色の移り変わりを見て」彼女の声は、この距離からでもはっきりと鮮明に聞こえる。「コバルトブルーからウルトラマリンへ、そしてこの微かなセルリアン――この作家の色を操る技術は信じられないわ」

真琴が頷く。その瞳には、私が滅多に見ることのない何かが宿っていた。興奮。純粋で、何ひとつ削がれていない興奮が。

私は自分のシャンパンに視線を落とす。液体が照明を反射してきらめいている。少なくとも、これが金色であることはわかる――私が唯一、正確に識別できる数少ない色の一つ。

赤。緑。それらは私にとって、ただの濁った灰褐色の滲みにしか見えない。

色覚異常。美術学校において、その言葉は呪いも同然だ。

「茜くん!」誰かに名前を呼ばれ、私は顔を上げた。無理に笑みを浮かべて。

コレクターらしき人物が、私の指導教員である松本教授を伴ってこちらへ歩いてくるところだった。

「こちらは黒川さんだ」と松本教授が言った。「君の彫刻シリーズに大変興味をお持ちでね」

私はシャンパンを置き、コレクターの手を握った。彫刻の話――それなら安全領域だ。彫刻に色は必要ない。フォルムと、テクスチャーと、空間認識能力さえあればいい。

そもそも、私が彫刻に転向したのもそれが理由だ。

けれど、私の視線は何度も真琴の方へと引き寄せられてしまう。

あの女性は今や真琴の腕に自分の腕を絡め、二人は笑い合いながら次の作品へと移動している。

二人はお似合いに見えた。完璧な組み合わせだ。

シャンパンが舌の上で苦く感じられた。私は近くのテーブルにグラスを置く。手が微かに震えていた。

どうしてこうなってしまったんだろう。まだ思い出せる。彼が初めて私を庇ってくれた時のこと。まだ私たちが、あの遊び場にいたただの子供だった頃――

「なにその色! キモっ!」

八歳の私は、小学校の運動場の隅でうずくまり、顔を涙で濡らしていた。足元には、破られた画用紙の切れ端が散らばっている――昼休みを丸々使って描いた、秋の木々の絵。

でも、色は全部めちゃくちゃ。赤と緑を混同してしまって、出来上がったのは醜い泥のような茶色だった。

「おまえ、美術の授業なんか出んなよ!」ガキ大将が笑いながら叫ぶ。「色もわかんねーくせに!」

「もうやめろよ」

声がした。冷たくて、怒りに満ちた声が。

顔を上げると、そこに真琴が立っていた。九歳にしては、もう同年代の子供たちより背が高く、今の彼は危険な雰囲気をまとっていた。

「なんだと?」少年が振り返る。でも、それが真琴だとわかると、彼の顔色が変わった。

真琴は一歩前に出ると、その子の襟首を掴んで、ぐいと持ち上げた。

「もうやめろって言ったんだ」彼の声は静かだったが、その一言一言は氷のように鋭かった。「もう一回でも彼女の悪口言ったり、持ち物に触れたりしたら……後悔させるぞ。わかったな?」

少年は必死に頷き、真琴は彼を解放した。少年はよろめきながら、逃げるように去っていく。

真琴はしゃがみ込むと、破られた私の絵の切れ端を、一枚一枚拾い始めた。

「泣くなよ、茜」彼は静かに言った。「この絵は、うまいよ」

「でも、色が――」

「色なんて関係ない」彼は遮った。「世界で最も偉大な芸術の中には、白黒のものもあるって知ってるだろ? 茜は他の人とは違う見方で世界を見てる。それは欠陥じゃない。茜を特別にしてるんだ」

その夜、真琴の両親――高田夫妻が、私のいる児童養護施設まで迎えに来てくれた。

私の両親は二ヶ月前の自動車事故で亡くなった。私には他に誰もいなかった。

「茜ちゃん」奥さんが膝をつき、私の顔から優しく涙を拭ってくれた。「私たちは、あなたを養子に迎えたいの。私たちの家族の一員に。そうしてくれないかしら?」

私は真琴を見た。彼は私に手を差し伸べていた。

「茜の部屋もあるぞ」と彼は言った。「俺の部屋のすぐ隣だ。俺が守ってやる」

私は彼の手を取った。

その日から、真琴はいつもそばにいてくれた。学校で、誰かが私の「奇妙な」作品を馬鹿にすれば、彼は私の前に立ちはだかった。家では、宿題を手伝ってくれ、グレースケールの世界を理解する方法を教えてくれた。

彼は私の保護者だった。私の家族だった。

私の親友だった。

そして、私の最も深い秘密――私は彼を愛している。ずっと、彼を愛してきた。

「藤沢茜さん?」

その女性の声が、私を現実に引き戻した。振り返ると、彼女が私の前に立っていた。唇には親しげな笑みを浮かべて。

「はい」私はなんとか答え、普通に聞こえるよう努めた。

「絵美です」彼女は手を差し伸べた。「藤沢さんの彫刻シリーズ、拝見しました。『触覚の記憶』でしたっけ? 信じられないほど素晴らしいです。テクスチャーの使い方、空間認識力――本当に心を動かされました」

「ありがとうございます」私は彼女の手を握り返しながら言った。彼女の握力はしっかりしていた。

「特に、異なる素材を使って感情を伝える手法が大好きです」と彼女は続ける。「大理石の冷たさ、木の温もり、粘土の脆さ。色を使わなくても、完璧な物語を語ることができるんですね」

私の心臓が締め付けられる。彼女は私の色覚異常について知っているのだろうか?

「真琴からお聞きしました」私の混乱を読み取ったかのように、彼女は言った。「彼は、あなたが今まで会った中で最も才能のあるアーティストだと」

真琴が、私のことを?

「お二人は……知り合って長いんですか?」私は慎重に尋ねた。

「ああ、私たちは最近再会したばかりなんです」絵美さんは微笑んだ。「私はL市で働いていて、B市に戻ってきたばかりで。今、真琴とあるプロジェクトで協力しているんですよ」

「プロジェクト?」

「夢のプロジェクトですよ」彼女の目が輝いた。「正直、真琴があんなに何かに打ち込んでいるのを見たことがありません。彼はこのプロジェクトに本当にワクワクしていて。その話をするたびに、顔がぱっと明るくなるんです」

胃がねじれるような感覚がした。

「そのプロジェクトは、どんな内容なんですか?」

「まだあまり多くは言えませんが」絵美さんはミステリアスな笑みを浮かべて言った。「でも信じて。完成したら、きっと素晴らしいものになりますわ」

その時、真琴がこちらへ歩いてきた。

「茜」彼は私の名前を呼んだ。その声は柔らかい。「探したよ」

彼は絵美さんに目を向けた。「二人は会ったのか?」

「もちろん」絵美さんはまだ微笑んでいた。「藤沢さんは信じられないほど才能豊かだわ」

真琴は私を見つめる。その瞳は温かい。でも、私の頭の中は、絵美さんとの「夢のプロジェクト」のことだけでいっぱいだった。

彼を「顔がぱっと明るくなる」ほど夢中にさせるプロジェクト。

そして私はここにいる。色の見分けさえつかない私が。

どうすれば、私が彼をそんな風に輝かせることができるというのだろうか?

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