第5章

藤沢茜視点

三週間が経ち、来週にはN市での面接が控えている。

準備をすべきなんだ。プレゼンの練習、ポートフォリオの推敲、想定問答の反復練習。

それなのに、私が今見つめているのは、惨状そのものだった。

私の卒業制作は、失敗作の墓場と化していた。ありとあらゆる手を尽くした。色覚異常のアーティストを助けると謳う、あの色彩補助アプリとか。機械的な音声が『カドミウムレッド』『ビリジアン』と、さも意味があるかのように告げる。その名前を聞けば、私が何を感じるべきか、どうにかして理解できるとでも言うように。

でも、アプリは感情を教えてはくれない。キャンバスの上の絵の具に、命を吹き込んでは...

ログインして続きを読む