第8章

セリーナ視点

 彼女を見つめた瞬間、六年前――数え切れない戦場の光景が、脳裏を一気に駆け抜けた。

 暗影森林の、あの夜。マヤは弟の亡骸を抱きしめ、声が枯れるまで泣いていた。弟は息を引き取る直前まで、途切れ途切れに呟いていた。

「守れ……故郷を……」

 北境の氷原での包囲戦。仲間たちは私たちを逃がすために、ひとり、またひとりと雪の上に倒れていった。

 そして、若い顔。若い命。二度と家へ帰れなかった者たち。

 ――彼らが命と引き換えに掴み取った平和だ。誰にも壊させない。

「寝言はそこまでよ」

 私は霜の力を凝縮する。掌の上で冷気が渦を巻き、硬い氷がきしりと形を成した。

「あなた...

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