あなたを愛する最後の冬

あなたを愛する最後の冬

渡り雨 · 完結 · 19.8k 文字

1.2k
トレンド
1.2k
閲覧数
0
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

私はかつて、最も気高き魔女の後継者、セリーナだった。

六年前の「深淵の戦い」で、黒竜の領主ドラコの心臓は敵の鋭い爪に貫かれた。
私はためらうことなく自らの胸を切り裂き、半分の『魔女の心臓』を捧げて彼の体へと溶け込ませ、彼を死の淵から引き戻したのだ。

それ以来、私は魔力枯渇の苦痛に耐えながらも、彼のために血みどろの戦いに身を投じて玉座への道を切り拓いた。何度も命を落としかけながら、ただ一つ――ドラコが戴冠した暁には私を王妃として迎えるという約束だけを待ちわびていた。

だが、戴冠式の日。ドラコはハーフエルフのアイビーを連れ帰り、あろうことか私に王妃の座を明け渡すよう命じたのだ。

理由は?アイビーが深淵で三年間彼に寄り添い、あまつさえ彼の子を身籠っているからだという。

完全に心が死んだ私は、ドラコへの愛を根こそぎ剥ぎ取る『忘愛の秘薬』を飲み干した。

そして三日後、極北の地へと旅立ち、銀狼族との政略結婚を受け入れることを決意した。

チャプター 1

「セリーナ……本当に、ドラコのこと……もう、完全に好きじゃないの? それで政略結婚までする気?」

 大魔女のマヤが背後に立ち、その声には心配と戸惑いが滲んでいた。

 私は魔法のローブをトランクへ押し込み、顔も上げずに言う。

「もうその人の話はやめて、マヤ。あいつには……何の感情も残ってない」

「でも、あなたはあの人のためにどれだけ……!」マヤの声が跳ね上がる。

「あなたは『魔女の心臓』を半分、捧げたのよ! それは魔女族にとって、いちばん貴重な力の源泉なのに!」

 マヤは諦めきれないのか、魔法で鏡像を凝結させた。私の犠牲を思い出させるために。

 鏡の中に映ったのは、六年前――深淵の戦場。

 血にまみれた私が銀の刃で自分の胸を裂き、脈打つ半分の心臓を、瀕死のドラコの身体へ押し込んでいく。

 私は、その『喜んで差し出していた自分』を見つめ、ただ愚かだと思った。

 マヤはなおも続ける。

「それに、この六年の戦争だって。彼に王権を取らせるために、あなたはどれだけ犠牲にした? 戦いのたびに先頭に立って、彼の代わりに致命傷を受けて。交渉のたびに魔力を削って、有利な条件を引き出して。毎回、毎回――」

「もういい」

 遮った瞬間、自分でも理由のわからない苛立ちが胸を刺した。

 そう、覚えている。全部。

 けれどドラコへの感情を失ってしまった今となっては、あれらは他人の物語みたいに遠くて、滑稽で、うんざりするだけだ。

「マヤ。全部、過去の話」私は荷造りを続ける。

「今の私は、ここを出たい。それだけ」

 マヤは深く息を吸い、言い方を変えて迫った。

「たとえドラコに気持ちがなくなったとしても、そんなに急いで政略結婚を決めるなんて――」

「どうでもいい。誰に嫁いだって同じ」

「セリーナ!」マヤはさらに焦った。

「銀狼族のカール伯爵がどんな男か知ってるの? 極地でいちばん冷酷無情な狼王よ。噂じゃ、婚約者を三人も自分の手で引き裂いたって――そんな男、伴侶にしちゃだめ――」

 答えようとした、そのとき。

 扉が勢いよく押し開けられた。

「伴侶、だと?」

 入口から響いたのは、ドラコの冷えきった声だった。

 ドラコはアイビーを抱き寄せたまま入ってくる。かつて私の心を揺らした暗金の瞳には、いら立ちしか浮かんでいない。

 アイビーがすぐに指先でドラコの胸をつつき、甘ったるい声を作る。

「まあ、あなた。きっと明日の戴冠祭の段取りの話よ~。あなたの伴侶として、セリーナも私も、しっかり準備しなきゃね」

 小首を傾げて私へ笑いかけた。

「……そうよね、セリーナ?」

 私は鼻で笑う。

「伴侶はあんたでしょ。私は違う」

 ドラコの顔色が一瞬で沈んだ。

「セリーナ。アイビーは十分に譲歩している。王后の座を二人で分けると言っているんだ。それで何が不満だ?」

 鼻を鳴らし、言い捨てる。

「明日の式典は大人しく出ろ。くだらない意地を張るな」

 マヤが怒りで震え、私が忘情薬を飲んだことを告げようとした瞬間、アイビーが言葉を被せた。

「あらぁ、セリーナの首飾り、すっごく綺麗~」

 アイビーは近づき、私の胸元――月光石のネックレスに視線を吸い寄せる。

「この月光石って、心を落ち着かせる効果があるんでしょう? 最近、妊娠のせいで眠れなくて……私もそんなのがあったらいいのに……」

 弱々しくドラコの肩にもたれた。

 私は首飾りを見下ろす。

 十八の成人のとき、ドラコが極北の氷淵の奥底から持ち帰り、一か月かけて彫ってくれた――誓いの証。

「アイビーに渡せ」

 ドラコがためらいなく命じた。

 笑うしかない。相変わらず、命令するのが当然だと思っている。

「嫌」

 ドラコの表情が険しくなり、大股で詰め寄る。手を伸ばし、奪い取ろうとした。

 反射的に私は魔力で身をかわす。

 紫の光がぱっと弾け、部屋の空気を震わせた。

 次の瞬間、アイビーが可愛らしい悲鳴を上げて倒れ込む。ちょうど拡がった魔力の波に『ぶつかった』かのように腹を押さえ、苦しげに喘いだ。

「わ、私の子……ドラコ、私の子が……」

「アイビー!」

 ドラコの顔色が激変する。

 直後、凄まじい竜威が私へ叩きつけられた。

「――っ!」

 身体が浮き、壁へ激突する。喉の奥が熱くなり、血を吐いた。

 マヤが悲鳴を上げて駆け寄り、私を支えながらアイビーを指さして怒鳴る。

「演技よ! 今の、かすってもいないじゃない!」

「黙れ」

 ドラコの瞳に暗金の火が燃え上がった。

 彼は私の前まで来ると、手を振り抜く。

「ぱんっ!」

 頬が横へ弾かれ、口の端が切れて血が滲む。

 耳の奥がじんじん鳴り、半分の顔が灼けるように痛い。

「セリーナ。お前の一族を躾けろ」ドラコは氷のように言った。「アイビーと子に手を出すなら、魔女族ごと葬る」

 私は口元の血を拭う。

「安心して。これからは、あなたたちから遠く離れて生きる」

「まだ口答えするか!」

 ドラコはさらに怒り、乱暴に私の首からネックレスを引きちぎった。そして壁炉の炎へ放り込む。

 それからアイビーを抱え、振り返りもせず去っていった。

 私は呆然と、月光石が炎の中で溶け、星屑みたいに散って消えるのを見つめた。

 ――いい。これで、全部清算だ。

 マヤが私を起こし、嗚咽混じりに言う。

「ごめんなさい、セリーナ……私が余計なことを……」

 私は首を振った。

「あなたのせいじゃない」

 身体の傷は痛むのに、心は異様なほど静かだった。

 マヤはさらに泣き崩れる。

「最低な竜族……! 離れなさい、セリーナ! 絶対に離れるのよ! いつか必ず、あいつは後悔する!」

 私は彼女の肩にもたれ、壁炉の灰を見つめる。

 後悔?

 それが、私に何の関係がある。

 忘情薬はもう効いている。ドラコへの愛なんて、きれいに剥がれ落ちた。

「あと三日」目を閉じる。

「三日後、ここを出る」

 二度と、戻らない。

最新チャプター

おすすめ 😍

今さら跪いても遅い

今さら跪いても遅い

19.1k 閲覧数 · 連載中 · ショコラ風味
5年間の結婚生活を壊したのが、1通の親子鑑定書だとは夢にも思わなかった。

自分が手塩にかけて育てた息子は、夫が元カノとの間に作った子供だった。さらにあり得ないことに、父子は最初からその事実を知っており、結託して彼女に隠していたのだ。

それだけではない。彼女はドアの隙間から、夫の計画を親の耳で聞いてしまう。元カノが戻ってきたら、彼女を「体面よく」会社から退職させ、財産を一切渡さずに追い出し、5000万の「補償金」で済ませようというのだ。

5000万?彼女が一人で支えてきた会社で、彼女の金と人脉を使って夫の尻拭いをしてきた結果が、たったのそれだけ?

絶望した彼女は、自分のすべてを取り戻すと誓う。

恩知らずの息子? もう愛さない。初恋に狂う夫? 彼も消え失せろ。

だが、彼女が本当に離婚して完全に去ったとき、あの父子は再び彼女に家に帰ってきてくれと泣きついてきた!
「もう一度だけチャンスをくれ」

今度の彼女は、一瞥さえくれなかった。
お払い箱の杖は、夜に咲く

お払い箱の杖は、夜に咲く

6.2k 閲覧数 · 連載中 · 森川澪
「目が見えるようになった途端、手すりの杖を捨てるのね」

事故で盲目かつ失聴した夫を5年間、溢れる愛で献身的に支え続けた主人公。しかし、五感が戻った夫が最初に抱きしめたのは、かつて彼が愛した初恋の女だった。

家族からも夫からも裏切られた彼女は、未练を一切捨てて離婚を決意。

離婚の理由に「夫の夜の体力不足」という最大の屈辱を書き残し、結婚指輪を捨ててあっさりと家を出る。

夫の好みに合わせてこれまで隠していた「息をのむほど明艶な美貌」を解放し、夜の街へと繰り出した彼女は、一瞬で全場の視線を独占する。

バーのVIP席からその圧倒的な美女を凝視し、なぜか目が離せなくなっている元夫は、まだ気づいていない。それが、自分が「地味で退屈な女」だと見下していた元妻の真の姿だということに……
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

339.6k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
離婚後、奥さんのマスクが外れた

離婚後、奥さんのマスクが外れた

331k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
結婚して2年後、佐藤悟は突然離婚を申し立てた。
彼は言った。「彼女が戻ってきた。離婚しよう。君が欲しいものは何でもあげる。」
結婚して2年後、彼女はもはや彼が自分を愛していない現実を無視できなくなり、過去の関係が感情的な苦痛を引き起こすと、現在の関係に影響を与えることが明らかになった。

山本希は口論を避け、このカップルを祝福することを選び、自分の条件を提示した。
「あなたの最も高価な限定版スポーツカーが欲しい。」
「いいよ。」
「郊外の別荘も。」
「わかった。」
「結婚してからの2年間に得た数十億ドルを分け合うこと。」
「?」
終末世界で異空間チート!無限備蓄で兵王様を攻略します

終末世界で異空間チート!無限備蓄で兵王様を攻略します

25.8k 閲覧数 · 連載中 · 夜明けのソラ
渡辺千咲は大学卒業後、人生のどん底に落ち、みじめな思いで故郷に戻った。ところが、幼い頃に覚醒した役立たずの空間が突然見知らぬ男に結び付けられた。

男の方は食料不足、渡辺千咲の方は金欠で、二人は意気投合して互いに協力することになった。

「俺のいる場所では、金やダイヤモンドが地面に落ちていても誰も拾わない」

渡辺千咲はそれを聞いて目を輝かせた。男のいる時空では終末が訪れ、動植物が変異し、土地は耕作不能、水源は汚染され、さらに人類の安全を脅かすゾンビがいるのだった。

中島暁は終末世界で一年間苦しみながらも生き抜き、弾薬も食料も尽きて重傷を負いながらも、最後まで信念を貫き、仲間を見捨てることを拒んだ。

「唐揚げ、肉まん、きれいな水、あなたが欲しい物資なら何でも調達してやる!」

渡辺千咲はもはやみじめではなくなった。クリスタルのエネルギーで肌が白くなり体質が改善され、眼鏡も外せるようになり、金や骨董品が手に入り続けた。

中島暁が終末世界から持ち込んだ書籍、詞曲、漫画……によって、渡辺千咲は一躍文学芸術の大家となった。

祖母や、偽善的で貪欲な親戚たちが泣きながら彼女に許しを求めた。

数年後、記者が渡辺千咲の願いを尋ねた――

「世界平和を願っています」

大げさだと思う人もいたが、後になって戦乱を平定したのも彼女、経済を発展させたのも彼女、薬剤を発明したのも彼女の部下のチーム、ウイルス爆発を救ったのも彼女だったことが分かった。

終末世界で彼女は最後の人類を率い、ゾンビに勝利し、赤い月の終末災害を乗り越えた。

彼女の願いは実現したのだった。
死んだはずの妻が、自分と「瓜二つ」の双子を連れて帰ってきた

死んだはずの妻が、自分と「瓜二つ」の双子を連れて帰ってきた

188.9k 閲覧数 · 連載中 · 白石
5年前、身に覚えのない罪で投獄され、身重の体で捨てられた私。
異国の地で必死に生き抜き、女手一つで双子の息子を育て上げた。

平穏を求めて帰国した私だったが、運命は残酷だ。
かつて私を捨てた元夫・ベンジャミンに見つかってしまったのだ。

「その子供たち……俺にそっくりじゃないか」

彼の目の前にいるのは、彼を縮小したかのような「生き写し」の双子。
ベンジャミンは驚愕し、私たちを引き留めようとする。
しかし、息子たちは冷酷な父親を敵視し、断固として拒絶するのだった。

「僕たちを捨てた男なんて、父親じゃない!」

やがて明らかになる、あの日の「火事」の真相と、悪女オリビアの卑劣な罠。
すべての誤解が解けた時、彼が差し出す愛を、私は受け入れることができるのか?

憎しみと、消え残る愛の間で揺れる、会と許しの物語。
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

321.1k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

813k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
天才陰陽師だった御影星奈は、かつて恋愛脳のどん底に落ち、愛する男のために七年もの間、辱めに耐え続けてきた。しかしついに、ある日はっと我に返る。
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!
不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

355.4k 閲覧数 · 連載中 · 七海
人生最良の日になるはずだった、結婚式当日。
新郎の車から出てきたのは、見知らぬ女の派手なレースの下着だった。

しかも、その布切れにはまだ。生々しい情事の痕跡が残されていた。

吐き気がするほどの裏切り。
幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた私。

けれど、泣き寝入りなんてしてやらない。
私はその場でウェディングドレスの裾を翻し、決意した。

「こんな汚らわしい男は捨ててやる」

私が選んだ次の相手は、彼など足元にも及ばない世界的な億万長者で?
マフィア姫の帰還

マフィア姫の帰還

56.3k 閲覧数 · 完結 · Tonje Unosen
タリアは何年ものあいだ、母と義理の妹、そして継父と暮らしてきた。だがある日、ついにそこから逃げ出すことに成功する。

ところがその直後、自分にはまだ外に家族がいるのだと知る。そして本当に自分を愛してくれる人たちが大勢いることも――そんなものは今まで感じたことがなかった。少なくとも、彼女の記憶にあるかぎりでは。

タリアは人を信じることを学ばなければならない。新しくできた兄たちにも、ありのままの自分を受け入れてもらわなければならないのだ。
地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

6.9k 閲覧数 · 連載中 · 三日月プリン
「救うのは妹の方だ。お前は強いから、生き残れるだろう」
十八年間、空気のように扱われ、誘拐事件の際にも迷わず切り捨てられた私。
「強さ」という名の言い訳で死の淵に追いやられた私は、地獄の果てで生き延びた。
そして今、全国民が見守る超人気リアリティショーの舞台に、私は「かつての復讐者」として舞い戻る。
家族が偽りの善人面を振りまく中、彼らの仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていく最高のショウタイム。
そんな私を面白がり、盤面をひっくり返す男がいた。冷徹なるF1チャンピオン。彼だけは、私の冷酷な正義を肯定し、その権力で私を囲い込む。
さあ、復讐劇の始まりよ。私を「可哀想な犠牲者」だと思っていた報い、その身に刻ませてあげる。
二度目はない 動じず咲く

二度目はない 動じず咲く

168.4k 閲覧数 · 完結 · Gloria Fox
結婚式の一ヶ月前、私は一年かけて自らの手で縫い上げたウェディングドレスを燃やした。

婚約者は身ごもった愛人を腕に抱き寄せたままそこに立ち、私を鼻で笑っていた。「俺がいなきゃ、お前なんて何の価値もない」

私はきびすを返し、この街で最も裕福な男の扉を叩いた。「ロック氏、政略結婚にご興味はおありですか? 千億ドル相当の株式――それに加え、未来のビジネス帝国も無料でお付けいたしますわ」