第35章 彼女がいないのも無理はない

「古沢社長、起きてください」

「起きないと飛行機に間に合いません。飛行機に乗れないと商談が流れます。商談が流れたら会社は儲かりません。会社が儲からなかったら私のお給料が――お給料がなくなったら私は――」

「はいはい」古沢信弘がようやく折れた。「起きる、起きるから。もう唱えるな」

上体を起こした拍子に、掛け布団がするりと落ちる。引き締まった上半身が露わになった。

相馬寧の胸がひゅっと縮む。

「……じゃ、じゃあ私、先に出ますね」

「待て」

古沢信弘がそんなに簡単に逃がすはずがない。顎でクローゼットを示す。

「服、持ってこい」

相馬寧が扉を開けると、中にはきっちり揃えられた服が何...

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