第10章

藤堂心乃の瞳が恐怖に染まる。彼女は鈴木隆を睨みつけ、震える声で言った。

「あ、あなたたち、いったい何をしようとしてるの?」

鈴木隆は銀縁の眼鏡を押し上げた。レンズが和室の薄暗い灯りを反射し、彼の目元の感情を覆い隠す。

彼は優雅に手を伸ばし、その指先で藤堂心乃の蒼白な頬をそっと撫でた。まるで精巧な芸術品を扱うかのような手つきだ。

「藤堂さん、私達はあなたに生きる機会を与えましょう」

彼の声は、身の毛がよだつほどに優しかった。

「公平な選択です。あなたと、あなたの父親。どちらか一人が生き残る」

その言葉を聞き、野田潤が崩れ落ちるように絶叫した。

「あんたたち、狂ってる!...

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