いじめっ子が家に遊びに来たがるけど、うちの家族は全員シリアルキラー

いじめっ子が家に遊びに来たがるけど、うちの家族は全員シリアルキラー

渡り雨 · 完結 · 22.6k 文字

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紹介

学校でいじめに遭った後、いじめっ子たちが私の家に来るという。

私の両親や家族に会いたい、と。

私は泣きながら行かないでと懇願した。

だって、私の父は連続殺人犯で、母は猟奇殺人鬼で、兄はソシオパスだから。

みんな、死んでしまう。

チャプター 1

 いじめで負った今日の傷が胸に疼き、私は自宅の扉の前で震えていた。藤堂心乃と彼女の取り巻き連中は、今日、特に手加減がなかった。

 腕時計に目を落とす。

 六時ちょうど。いつもより三十分も遅い。

 チャイムを鳴らそうとした、その時。不意に扉が開いた。

「おかえり、優」

 父の鈴木正雄が、穏やかな笑みを浮かべて玄関に立っていた。

 身に着けたエプロンには真新しい血痕が飛び散り、その鮮血は白い布地の上でひどく目に付いた。

「お腹が空いただろう。お父さんが和菓子を用意しておいたよ」

 私は恐怖を必死に押し殺し、小声で応えた。

「ただいま、帰りました」

 父は私の視線がエプロンに注がれていることに気づき、笑って説明する。

「うっかりまたエプロンを汚してしまってね。後でお母さんにまた小言を言われてしまうよ」

 彼は黒縁の眼鏡を外し、まるでそれが台所での些細な失敗であるかのように振る舞った。

 私は血痕に視線を長く留めないよう努めながら、静かに頷いて玄関へ上がり、室内用のスリッパに履き替えた。

 この一見ありふれた家が、どんな秘密を隠しているのかを知っているのは、私だけだ。

 廊下を抜け、私たちは居間へと向かった。

 特製の木椅子に、一人の女が縛り付けられていた。唇は縫い合わされ、喉からくぐもった呻き声しか漏れてこない。

 彼女は私を見ると、その目に一筋の希望を宿し、絶望的な救いを求める視線を投げかけてきた。

 私の体は微かに震え、咄嗟に視線を逸らす。壁に掛けられた家訓の書へと。それは祖母の筆によるもので、見た目は典雅で高貴だが、その内容は身の毛もよだつものだった。

「優、このおばさんが何をしたか分かるかい?」

 父の声は、まるで普通の物語を語るかのように、なおも穏やかだった。

「彼女は三歳の娘を公園に置き去りにして、自分は他の男と逢引していたんだ。結局、その女の子は見知らぬ男に連れ去られて、その後……」

 父は最後まで言わなかったが、その先で何が起きたのかは私にも分かった。

 それを聞いた女は激しくもがき始め、塞がれた喉から凄まじい声を絞り出した。

 私は低いテーブルの傍に硬直したまま正座し、湯呑みを固く握りしめた。顔を上げる勇気はない。

 女の声は数分間続き、息の詰まるような絶望が部屋全体に満ちていく。

 父は紙で黒縁眼鏡に付着した血を丁寧に拭っている。

「優、これからお父さんは『浄化』の儀式を行うからね。少し気分が悪くなるかもしれないから、先に部屋へ戻っていなさい」

 私は立ち上がったが、恐怖で両足に力が入らなかった。

 私が背を向けて立ち去ろうとした、その時。入ってきたばかりの母に、父が囁くのが聞こえた。

「この子は本当に、私々には少しも似ていないな」

 部屋に戻ると、足が震えて全身から冷や汗が噴き出し、壁に寄りかかったままズルズルと床に座り込んだ。

 目を閉じても、記憶が流れ込んでくるのを止められない。

 四歳の時、私は初めて父が子供を虐待死させた男に『審判』を下すのを目撃した。

 あの日から、私は自分の家族が普通ではないのだと知った。

 不安に駆られてスマートフォンに目をやる。明日の夜の約束を思い出し、恐怖が潮のように押し寄せてきた。藤堂心乃たちが私の家を訪れる計画を立てている。

「どんな家庭がこんな出来損ないを育てるのか」

 私は何度も、いじめられるたびに家に来ないでと懇願した。けれど藤堂心乃は、私の家族に会ってみたい、もしかしたら私にしたのと同じ手口で家族をいじめてやりたい、と冷笑するだけだった。

 今日の午後、藤堂心乃の拳が再び私の顔を殴りつけた時も、藤堂心乃は傍らでせせら笑っていた。

 彼女は知らないのだ。私の家を訪れた者で、『審判』を生き延びた者は一人もいないということを。

 私は部屋の隅で体を丸め、階下から聞こえてくる微かな物音に耳を澄ませる。明日、何が起こるのか、見当もつかない。

 唯一確かなのは、藤堂心乃が、彼女の全く知らない地獄へと足を踏み入れようとしていることだけだった。

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