チャプター 88 *

アンジェリーナ視点

私たちは車を降りた。

影の中から、こちらを窺う視線がいくつも刺さってくるのを感じる。

ダニエルは三度目のネクタイ直しをした。これから商談のディナーに入る人間としては、不釣り合いなほど落ち着きがない。

「中に入ったら、身を隠していてくれ」ダニエルが言った。「俺ひとりで片づけないといけない、私的な用がある」

私は表情を動かさない。「だったら、私は何のためにここにいるの?」

「護衛だ。プロみたいにやってくれ。影にいて、背中を見張る。でも目立つな」

「了解」

必要な会話はそれだけだった。

扉をくぐった瞬間、私は人の波に溶けた。空港で着替えてきたワンピースは、黒の膝丈で、...

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