第九十六章 掻き回す

梨花の声はまだホール中に響いていた。写真は高く掲げられたまま、照明を受けて鋭い角度を晒している——何も証明できないが、人の疑心を煽るには十分だった。

場内の議論はひとつの方向を失い、収拾がつかなくなっていた。

田中は顔色を変え、唇を動かしかけたが、言葉が出てこなかった——どんな弁明も、この状況では言い訳にしか聞こえない。

梨花は演台の前に立ち、その微妙な傾きを感じ取った。胸の奥に、久しぶりの安堵がじわりと広がる。

水さえ濁らせればいい。

舞台袖で、一葉はスマートフォンの画面を消し、ハンドバッグにしまった。

その場に三秒間、立ったまま。

それから、舞台中央へと歩き出した。

駆...

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