いらないと言われ続けた養女が、実は誰よりも価値があった件。今さら気づいても、もう遅すぎます

いらないと言われ続けた養女が、実は誰よりも価値があった件。今さら気づいても、もう遅すぎます

霜月 蒔雪 · 連載中 · 337.1k 文字

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紹介

浮島家に引き取られてから二十年。一葉はずっと「いらない子」だった。

しかし浮島家が知らなかっただけで、一葉はとっくに自分の世界を持っていた。複数の顔を持ち、誰にも気づかれないまま、静かに頂点に立っていた。

追放された日、一葉の前に現れたのは水無瀬財閥だった。彼らにとって一葉は探し続けていた存在——迎え入れられた瞬間、初めて「家族」というものを知った。

そして鷹司家の彼と出会い、運命が動き始めた。

浮島家が一葉の本当の価値に気づいた頃には、もう遅すぎた。

「戻ってきてくれないか」

——戻る理由が、もうどこにもありません。

チャプター 1

シャンデリアの光が降り注ぎ、宴会場はざわめきに満ちていた。

一葉は片隅に立ち、ミネラルウォーターのグラスを手にしていた。

二十年。

ここで電球を三度替えた。あの姿見は大阪のオークションで探し出した。毎朝五時に起きてあの蘭に水をやり、二年かかってようやく最初の一輪を咲かせた。

この家のどの角よりも、彼女はここを知っていた。

それでも、ここに属したことは一度もなかった。


浮島守人が近づいてきた。スーツはきっちりと着こなされ、声は低く押さえられていたが、音量はちょうど隣の二テーブルまで届くように計算されていた。

「一葉、東京のご両親のところへ行ったら……少し自分を抑えなさい。お前は甘やかされて育ったんだから、恥をかかせないようにしてくれ」

一葉はグラスに目を落とした。

彼が口にするすべての言葉は、彼女に向けられたものではなかった。

何も答えなかった。


浮島珠恵は今夜、華やかな訪問着をまとい、首元にはカルティエのネックレスが輝いていた。サファイアの主石が灯りを受け、細かな光を散らしている。

あのネックレスは、一葉が十八歳のとき、京都の老舗に頼んで探し出したものだった。お守りになりますようにと、そういう気持ちで。

珠恵は受け取り、一言の礼も言わなかった。

彼女が歩み寄ってきて、小さな礼箱を差し出した。口調はそっけなかった。

「これ、持って行きなさい。旅行用のコスメよ。向こうの生活に合うかどうか……まあ、なんとかなるでしょう」

言い終えると、さっさと別の客の方へ向かった。その背中はすっきりと潔かった。

一葉は箱を受け取り、開けなかった。

隣の椅子の上に置いた。


浮島梨花——浮島家がようやく取り戻した本物の宝——は今夜、淡いピンクの振袖を着て、髪には桜の金箔の簪を挿していた。目元がほんのり赤く染まっていた。

彼女は近づいてきて、一葉の向かいに腰を下ろし、ちょうどいい具合の嗚咽を帯びた声で言った。

「お姉様……東京、遠いですね。何かあったら、すぐ連絡してください。お小遣いも……毎月送りますから」

近くのテーブルから誰かがそっとつぶやいた。「本当に優しい子ね……」

梨花の目元がもう少し赤みを増した。

彼女はひと呼吸置いて、何気なく付け加えた。

「御園さんのこと……お姉様は心配しなくていいですよ。婚約のことは、私がちゃんと対応しますから」

一葉は一度だけ彼女を見た。

静かな視線だった。怒りも、涙もなかった。

ただ一瞬見て、それから目を逸らした。

梨花の瞳の奥で、何かが一瞬光った。

心配ではなかった。

それは——思い通りになった、という光だった。


一葉は急くことなく立ち上がった。

「御園さんのことは、ご自由に」

少し間を置いて、付け加えた。

「どうせろくでなしだから」

梨花の目に浮かんでいた涙が、一瞬凝固した。

珠恵が反対側から歩み寄り、声を低く抑えながらも鋭く言った。

「一葉、何を言ってるの。梨花が好意で——」

一葉は振り返り、静かに彼女を見た。

「浮島さん」

お母さん、ではなかった。

「私はこの家で二十年、誰にも迷惑をかけたことはありません」

一拍置いた。

「今日もそのつもりです」

珠恵は口を開き、また閉じた。

取り繕っていた笑顔が、少し崩れた。

一葉は礼箱を手に取り、茶卓の上に戻した。

そのまま宴会場の中央へと歩いていった。


守人が乾杯の挨拶に立った。

「皆さん、今夜は一葉のために……」

客たちが一斉にグラスを持ち上げた。

一葉も目の前のワイングラスを手に取った。

グラスを傾け、そっと液体を揺らした。

一秒、止まった。

——おかしい。

ほんのわずかな違和感だった。普通の人には気づかない程度の。液体の流れ方、表面張力のかすかな変化——何かが溶け込んで、本来の質感を変えているような感覚。

何なのかはわからなかった。

ただ、祖母の介護を始めてから三年が経っていた。毎日様々な薬剤を扱い、手の感触や気配で微細な異常を見分けることを覚えていた。この感覚には覚えがあった。以前、祖母の薬剤の配合が誤っていたとき、グラスを持ち上げた瞬間に何かがおかしいとわかった。

あのときと同じだった。

何が入っているかは、検査しなければわからない。でも、飲まない。

グラスを唇に近づけ、乾杯に応じているように見せかけた。皆が一斉に仰いで飲む一瞬、注意が逸れたその隙に、ナプキンで手元を隠しながら、酒液をバッグの中の空のサンプル瓶へ静かに移した。祖母の介護をしていたころに身についた習慣で、薬剤の小分けや検体採取のために常に持ち歩いていたものだった。

空になったグラスを置き、わずかに顎を上げて、飲み終えた素振りを作った。

梨花を見なかった。

でも、梨花が自分を見ていることはわかっていた。


挨拶が終わり、宴はまだ続いていた。

梨花は客の輪の中に座り、行儀よく微笑みながら、視線の端をずっと一葉に向けていた。

待っていた。

一葉の意識がぼやけ始めるのを、場にそぐわない言葉を口にするのを、この場で醜態を晒すのを——そのときに歩み寄って、一番やわらかな声で言うつもりだった。「お姉様、大丈夫ですか?」と。皆に見せるのだ。梨花は優しく、一葉は不安定だと。

二十分が経った。

一葉は新しいミネラルウォーターを手に、客の間を静かに行き来していた。表情は変わらず、足取りも乱れていなかった。

梨花の笑みが、一瞬固まった。

——おかしい。

待っていた反応が、一向に現れなかった。一葉はもうふらついているはずだった。言葉が鈍くなり、どこかのタイミングで取り乱すはずだった——でも、そうならなかった。ミネラルウォーターを手に客の間を静かに行き来し、足取りは乱れず、表情も変わらず、むしろ宴が始まったときより落ち着いて見えた。

梨花はそっとワイングラスを置き、さりげなく視線を動かした。

ミネラルウォーター。いつ替えたのか。

思い出した。挨拶が終わった後、一葉は部屋の隅のドリンクテーブルへ行っていた。動作はごく自然で、ただ一杯取っただけのように見えた。何もおかしなところはなかった。

でも、あのワインは——なくなっていた。

梨花の胸が、一拍だけ乱れた。


宴はほどなくして終わりを迎えた。

客たちが次々と帰り、宴会場の話し声が静かに引いていった。一葉は空のミネラルウォーターのグラスをトレイに置き、隅の椅子に置いていたスーツケースの取っ手を手に取った。

守人と珠恵のところへ歩いていき、挨拶をした。守人は軽く肩を叩いて「気をつけてな」と言った。客に向ける言葉より、よほど素っ気なかった。珠恵はうなずき、もう隣の客の方を向きながら「早く休みなさい」と言った。

一葉はお礼を言って、向き直った。

梨花の横を通り過ぎるとき、足を止めなかった。ただ、すれ違う一瞬だけ、誰に向けて言うでもない声でつぶやいた。

「今夜のお酒、おいしかったです」

梨花の体が、三秒間、固まった。

一葉はもう通り過ぎていた。振り返らなかった。宴会場の扉が閉まった。梨花はその場に立ち尽くし、顔には笑みを貼りつけたまま——ドレスの横で、手が静かに、拳を作った。


浮島家の近くに二十四時間営業のコンビニがあった。

一葉はそこで緩衝材と保冷袋、それから小さな段ボール箱を買った。サンプル瓶を丁寧に包んで箱に入れ、しっかりと封をした。セルフ発送機を操作し、東京の住所を入力した。

宛先:桐谷澄子。

澄子は一葉の古い仕事仲間だった。薬剤師の資格を持ち、今は後方支援と調査を担っている。薬の分析も、人の素性も、帳簿の裏も——澄子が手をつけて解けないものはなかった。

成分が何なのかはまだわからなかった。でも、あの異常な質感には覚えがあった。澄子なら、どう動くべきかわかるはずだった。

封筒を投函口に入れると、機械が静かな通知音を立てた。

一葉はコンビニの入り口に立ち、スマートフォンで時刻を確認した。

明朝七時のフライト。

荷物は中型のスーツケースひとつと、肩掛けバッグひとつ。二十年間で、それだけだった。

スマートフォンが震えた。知らない番号からのメッセージだった。

「一葉。羽田にいる。——蒼介」

その一行をしばらく見つめた。

タクシーがコンビニの前に停まり、運転手が窓を下ろした。

「羽田空港ですか?」

一葉はスマートフォンをポケットに仕舞い、スーツケースを引いて車のドアへ歩いた。

「はい」

ドアが閉まった。

バックミラーの中で、コンビニの明かりが少しずつ遠ざかっていった。

振り返らなかった。

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