第5章

祭りの喧騒が嘘のように静まり返った町で、しかし、水面下では奇妙な波紋が広がり始めていた。

祭りが終わって、一週間が経った頃のことだ。

発端は、集落の中心にある共同井戸だった。

水を汲みに来た老婆が、まるで蜂蜜でも溶かしたかのように、井戸水がほのかな甘みを帯びていることに気づいたのだ。

「ちょっとみんな、この水飲んでごらんよ!まるで蜜みたいに甘いんだから!」

興奮した老婆の声に、人々が妾らと集まってくる。

その知らせは瞬く間に町中を駆け巡り、誰もがこぞって『甘い井戸の奇跡』を味わいに来た。

それが、数日前に千夏が井戸を探検した際、うっかり零してしまった神力の残り滓...

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