第118章

翌日の夕暮れ時。

相沢千尋は夕食の時間を狙って実家へ戻った。

邸宅の玄関に着いたところで、ちょうど一ノ瀬律と鉢合わせた。

視線が絡み合う。昨日耳にした話を思い出し、千尋の胸中は少し複雑だった。そのためか、律を見つめる時間がいつもより長くなってしまった。

男の足が、彼女の目の前で止まる。

清冽で冷たいウッディな香りが鼻腔をくすぐった。

距離が、少し近い。

我に返った千尋が後ずさろうとした瞬間、頭上から律の皮肉めいた声が降ってきた。

「そんな目で見て、誰に誤解させたいんだ?」

千尋は顔を上げ、彼の感情の読めない瞳と真っ直ぐに視線を合わせた。

その瞬間、心に立っていたさざ波がす...

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