第29章

『まずは、家の中で何か盗まれたものがないか確認しよう。警察を呼ぶのはそれからだ』

一ノ瀬律は、彼女の体をそっと引き離した。

相沢エリカは顔に浮かべていたパニックをすっと引っ込めると、こくりと頷き、いかにも不安そうに家の中を調べ始めた。

律が突然帰ってしまうのを恐れるように、無理やり彼の手を引いて一緒に見回らせる。

十分ほど経ち、何も盗まれていないことを確認すると、エリカはわざとらしく怯えた声をあげた。

『あの黒い影、一体何が目的だったの? 何も盗まないなんて、もっと恐ろしいことを考えてるんじゃ……!』

言い終わるや否や、不安げな瞳で律を見上げる。

『律、お願い、ここにいてくれな...

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