第53章

ダークグレーを基調とした部屋で、一ノ瀬律は静かにベッドへ横たわっていた。

眉をひそめ、その端正な顔には不自然な赤みが差している。

「……怪我をしているのに、大人しく休まないからですよ」

傍らで、主治医が小言をこぼす。

朝早くから叩き起こされて駆けつけてみれば、怪我人が傷口を化膿させて高熱を出しているのだ。つい口うるさくもなる。

相沢千尋は、珍しく弱りきった様子の一ノ瀬律をじっと見つめながら、ふと昔を思い出した。彼がまだ感覚を取り戻していなかった、あの頃のことを。

怪我の身で無理をするなんて、一体何を考えているのか。

千尋は胸の奥で苛立ちを覚えた。そもそも、誰が看病してくれと頼ん...

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