第15章 誘拐犯と間違えられた

寒は顔を上げ、彼女を見つめた。無邪気な小鹿のような瞳で、軽く瞬きをして、まるで「入っていいですか?」と尋ねているようだった。

林田ナナは彼の後ろを見渡したが、他の人の姿は見えなかった。

寒一人?

あんなに小さな子供が、なぜ突然彼女の家の玄関に現れたのだろう?

林田ナナは言った、「寒、私に会いに来たの?」

寒は小さく頷いた。

林田ナナの胸に喜びが湧いた。

彼は自分の言葉を理解している。これは彼が自分で考える能力を持っている証拠だ。佐藤家の人々が思っているような知的障害児なんかではない。

「さあ、入って!」林田ナナは寒を家の中に招き入れた。

空はちょうどエプロンを締めていたとこ...

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