第95章 恩知らず

千葉晴美は鼻で笑った。こんな場面、見たことがない? 冗談じゃない。彼女が出席してきた研究会の数なら、指で数えられるようなものじゃない。

ただ、相手が青二才なら、いちいち説明してやる気にもならなかった。

辻原立羽は、千葉晴美がまるで取り合わないどころか、まともに目も向けないことに気づく。自尊心を根こそぎ傷つけられ、反射的に手を伸ばした。

「おい、この俺様が話しかけてんだぞ。聞いて――あ……いっ、痛たたたっ!」

指先が触れる寸前、千葉晴美は彼の手首を押さえ、くい、と軽くひねった。ぐきり、と骨がずれる嫌な音がする。

眉間には冷えた拒絶。整った顔立ちが、いっそう高嶺の花めいて無情に見えた。...

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