第160章 生死不明

「かすり傷だ、問題ない!」

稲崎秀信は眉一つ動かさず、彼女をより安全な物陰へと押しやった。

「自分の身を守るんだ!」

その時、彼は腰から素早く拳銃を抜くと、西園寺琴音の手に押し付けた。

「持ってろ! 護身用だ!」

彼の口調は切迫していた。

「来る前に治安が悪いとは聞いていたからな。念のために用意しておいたんだが、まさか車を降りた瞬間に巻き込まれるとは」

彼は手短に説明すると、すぐに前方への警戒に戻った。

手のひらに伝わる冷たい金属の感触に、西園寺琴音はわずかに身震いした。

銃など触ったこともない。だが、生死を分かつこの瞬間、彼女はグリップを強く握りしめ、かつてドラマや映画で...

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