第205章 陸奥司と一つ屋根の下

西園寺琴音はその魚の切り身を見つめたまま、瞳に何の感情も浮かべることなく、ただ極めて小さな声で言った。

「ありがとう」

しかし、その妙に居心地の悪い夕食が終わるまで、西園寺琴音の取り皿に置かれた魚は、手つかずのままそこに残されていた。

彼女は最初から最後まで、箸をつけることすらなかったのだ。

陸奥司の視線は何度かその冷遇された魚を掠め、次第に瞳の色を重く沈ませていった。

陸奥勝則はその一部始終を見ていたが、何も言わず、ゆったりとした動作でナプキンを使って口元を拭った。ただ、その濁った眼差しの奥に、一抹の憂慮を走らせるのみだった。

この家が抱える問題は、目に見えるものより遥かに深刻...

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