第206章 完全に諦める

翌朝、東の空が白み始めた頃。

陸奥勝則はリビングのソファに腰を下ろし、老眼鏡越しに今朝の経済新聞を広げていたが、その眉間には隠しきれない憂色が漂っていた。

やがて外から車のエンジン音が聞こえ、間もなくして、家政婦と介護士に付き添われた陸奥の祖母――大奥様が入ってきた。

入院していた頃に比べれば顔色は幾分良くなっていたが、その瞳の奥には不安の色が滲んでいる。

「勝則さん!」

ソファに座る陸奥勝則の姿を認め、大奥様の顔に驚きと喜びが浮かんだ。

「いつ戻られたの? 事前に連絡をくだされば、誰か迎えに行かせましたのに」

陸奥勝則は新聞を置き、老眼鏡を外すと、笑顔を作って立ち上がり妻を迎...

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