第210章 彼から離れて

彼女はダイニングに漂う重苦しい空気を、あえて読まないふりをしているようだった。視線を素早く陸奥司の顔に走らせると、すぐさま上座に座る陸奥勝則大奥様に向き直り、深々と頭を下げる。

「おじい様、おばあ様。朝のお食事中にお邪魔してしまい、申し訳ありません」

その声は甘く、申し訳なさでいっぱいに濡れていた。

「昨日はあまりの恐怖で取り乱してしまい、あんな夜更けにツカサさんにご迷惑をおかけしてしまいました。いけないことだとわかっていたのですが、どうしても心が落ち着かなくて……。せめて直接お詫びを申し上げたくて、朝一番に参りました」

非の打ち所がない言葉選びに、徹底して...

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