第265章:偶然?それとも計画的か?

トマス・グループの現最高責任者であるジェームズが、わざわざこれほど高価なワインを持参してきたのだ。来訪者に下心があることをフィニアンは痛いほど理解していたが、それでもジェームズの誘いを断る勇気はなかった。

なにしろジェームズほどの男なら、人ひとりを跡形もなく消すことなど、あまりに容易い。

「フィニアン?」

「ありがとうございます、トマス様。こんな高級なワインを口にできるなんて、一生の名誉です」

フィニアンは震える手で、目の前の琥珀色の液体に満たされたグラスを持ち上げ、唇へ運ぶと、慎重にほんのひと口だけ含んだ。

緊張のせいか、それとももともと酒に弱いのか、そのわずかなひと口だけで、フィ...

ログインして続きを読む