第276章アイデンティティはとらえどころがない:伝説のジュエリーデザイナーは誰ですか?

会場は次第に騒がしくなっていた。大勢がホールの中央へと押し寄せ、中央の台上に立つ男を見上げている。

ほんの少し前、その男はヴィオレットの新作コレクションを持ち出し、この場で大規模な競売を行うと宣言したのだ。

その一手が、群衆の空気を一気にざわつかせた。

宝飾デザイン展に集まっているのは、いずれも上流階級の面々である。伝説的なジュエリーデザイナーの新作そのものに興味がある者もいれば、それ以上に、目の前で起きる騒動を楽しみにしている者も多かった。

なにしろ、今日は当のヴィオレット本人が会場にいる。つい先ほどまで、写真やサインを求めて彼女に人が群がっていたのだ。

その本人の目の前で新作を競...

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