第290話エミリーはさらわれてしまう!

ジェームズの顔は陰っていた。

マークはジェームズの冷えきった表情を落ち着かない気持ちで見つめ、助っ人としてエミリーを呼びに行くべきか迷っていた。

なにしろ「短気」なジェームズが本気で怒ったら、誰にも手がつけられない。

長い沈黙ののち、ジェームズはふいに笑った。背筋が凍るような笑みだった。

「俺の妻を奪おうなんて、どこの命知らずか見てやる!」

ジェームズは歯を食いしばり、怒りを噛み殺すように言い放つ。「行くぞ、帰る」

「えっ?」

マークは呆然とした。まだ机の上には書類の山が積み上がっている。

「でも、これ全部サインが必要ですし、午後はプロジェクト会議も……」

「妻が奪われそうな...

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