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フェンリル・ダネシュティ視点

「ニコレッタがお前と話したんだな……」俺は吐き捨てるように言った。

彼女は食べ物を飲み込んだ。

「あの子が教えてくれただけよ。あなたの好物がサルマーレで、それが偶然にも私の得意料理の一つだって。だから食べたくなって、自分のために作ったの。別にたいしたことじゃないわ」

俺はキッチンへと足音荒く向かった。コンロにも、オーブンにも、どこにも鍋はなかった。彼女は料理をして、片付け、すべてをしまい終えていた。そして案の定、俺の分は何も残っていなかった。

冷蔵庫を開けると、全身の毛穴から怒りが沸騰するようだった。ミルクの入ったジャグと果物がいくつかあるだけで、すぐに食べられ...

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