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フェンリル・ダネシュティ視点

その言葉――俺のものだ――が、まだ頭蓋に反響していた。秒を追うごとに大きく、荒々しく、生々しくなっていく、原始の詠唱のように。

それは単なる思考ではなかった。生き物だった。血管を這い回り、魂に牙を突き立てる、生きた何かだ。俺は彼女の唇から自分のそれを引き離した。彼女の唇の味――甘く、鉄のようで、微かに俺自身の血の味が混じっている――が舌に残り、俺はざらついた木の幹に頭をもたせかけた。

胸が大きく上下し、呼吸は荒く重かった。空気は彼女の興奮の匂いと、森の地面の土臭いムスクで満ちていた。

彼女は首を傾げ、舌を伸ばして俺の顎から首筋にかけての血を舐め取った。そのゆっく...

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