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それを裏付けるような感覚は何もなかった。体に熱っぽさはないし、どうしようもなく抱かれたいという切実な欲求もない。私の内なる狼は穏やかで、満たされているようだった。以前とはまったく違う。

私は階段を駆け下りた。長いこと閉じ込められていたから、顔に風を感じ、新鮮な空気を吸いたくてたまらなかった。フェンリルがすぐ後ろについてくる。その視線は私の首筋に突き刺さるようで、まだ私の発情期の長さを心配しているのがわかった。

私は何も考えずにドアを押し開けた。

雪が小さな氷の結晶となって、宙を舞い落ちてくる。目の前に広がる森の白い景色がチカチカと揺れ、私は瞬きをしてその明るさに目を慣らした。

「新鮮な空気が恋...

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