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本当に巨大だった。今まで見た中で一番大きな狼。父の狼であるハンターや、同じくアルファのリーダーであるキャスピアンよりもずっと大きい。

私はその頭をすっぽり撫で回し、耳の後ろを掻いてやった。

長い灰色の毛皮が、白い雪を背景にきらりと光る。金色の瞳はヘッドライトのようにきらめいていた。黒い鼻面が空気を嗅ぎ、私の匂いを確かめると、満足げに喉を鳴らした。巨大な足が雪を踏みしめ、歩いた跡をくっきりと刻んでいく。

「今度は私の番、かな」私はそう呟き、彼から一歩離れた。

フェンリルは後ろ足で座ると、金色の瞳を私に据えたまま待っていた。耳はぴんと立てられ、わずかな物音にも反応している。さらなる侵入者がいないか...

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