第107章

カサック視点

喉の奥で悲鳴を押し殺したまま、俺は跳ね起きた。口の中には塩水と酢の味が充満している――三十年前、わずか三歳でオーク材のピクルス樽に押し込められた時の、決して消えない幻覚だ。木の隙間から仲間たちが虐殺される様を覗き見ながら、俺の小さな肺は酸素を求めて焼けつくようだった。

ベッドの上で上体を起こすと、背中は冷や汗でびっしょりと濡れていた。心臓が肋骨を激しく叩いている。窓の外では、グリーンランドのオーロラが不気味な光を投げかけ、北米の狼の縄張りを示す詳細な地図で覆われた壁を照らし出していた。地図上の主要なパックの位置には赤いピンが刺され、その中でも「ムーンシェイド」の領土だけは、暗...

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