第120章

フレイヤ視点

軍事要塞としか形容できない場所に近づくにつれ、SUVは速度を落とした。震える手を下腹部に当てる。気のせいかと思うほど微かな、しかし確かな命の鼓動を感じた。私に依存しているこの小さな命こそが、本来なら私がここにいるべきではない理由だった。無策かつ無力なまま、死の顎(あぎと)へと自ら飛び込もうとしているのだから。

「着いたぞ」

イーサンが言った。その声は不自然なほど強張っていた。

目の前に広がる悪夢のような光景に喉が締めつけられ、私は頷くことさえできなかった。ブラッドクローの拠点は単に防御が堅いというレベルではない――まさに難攻不落の要塞だ。高さ十五フィート(約四・五メートル...

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