第121章

フレイヤ視点

カサックの目が私をとらえた。その眼差しは冷徹で、残忍だった。「連れ戻すこと自体は問題ではない。問題は、お前が交換条件として何を持ってきたかだ」

殺気立った空気が肌を刺し、呼吸をするのも苦しい。私の中のエンバーは圧倒的な危険を察知して縮こまり、助け舟を出せる状態ではなかった。

「母さんとエレナを解放して」理性を凌駕する必死さで、私は懇願した。「代わりに私を人質にして」

子宮の中で小さな命が動いた。まるでその申し出に抗議するかのように。私は自分一人を犠牲にするわけではないのだと、思い知らされる。

「駄目だ!」イーサンの声が、露わになった恐怖で裏返った。

カサックは私たちの...

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