チャプター 35

フレイヤ視点

個室から出ると、直前の嘔吐のせいで足元はまだ震えていた。シンクから出る冷たい水で口をゆすぎ、顔を洗うと、脂汗の浮いた肌に心地よい刺激が走る。気分は最悪だったが、鏡に映る自分になんとか力なく微笑んでみせた。大理石のカウンターに金の蛇口――この展示会場の豪華な洗面所は、嘔吐さえも優雅な行為に見せてしまいそうだ。

新鮮な空気を求めて中庭に出た。そこでアイビーに見つかってしまった。彼女は私の顔を見るなり、深い懸念を浮かべた。

「フレイヤ、顔色がひどいわ」彼女は私の全身をくまなく観察しながら言った。「ノアに診てもらったほうがいいんじゃない?」

私は壁に軽く寄りかかって体を支えながら...

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