チャプター 46

ノア視点

鬱蒼と茂る下草をかき分けて進むと、ブーツの下から森の地面の柔らかな感触が伝わってきた。木漏れ日が差し込んでいるというのに、地面には奇妙な霧がまとわりつき、あたりは異界のような雰囲気に包まれている。

俺は立ち止まり、写本から書き写した古地図と手元のコンパスを見比べた。

「『守護獣に警戒せよ』か……」

つい数時間前、午前三時まで読みふけっていた黄ばんだページの警告を思い出し、俺は独りごちた。

人狼の世界で言う「獣」が何を指すのか、それはただの狼かもしれないし、あるいはもっと遥かに危険な化け物かもしれない。

だが、あの難解な人狼の医学書を一晩中読み漁り、ベラを三年に及ぶ昏睡状態...

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