チャプター 52

イーサン視点

匂いの痕跡は途絶えていた。三日間にわたる捜索も、フレイヤの気配すら掴めないままだ。崖下にある鬱蒼とした下生えを、俺はかき分けて進んだ。絶え間ない活動で筋肉が軋んでいる。この辺りの捜索はこれで三度目だったが、これまでの試みと同様、何一つ成果は上がらなかった。

「アルファ」背後からジェームズの声がした。その声色には疲労が滲んでいる。「別の方法を検討すべきかもしれません。あなたには休息が必要です」

俺は彼を無視し、森の地面に何かないか――布の切れ端、血の雫、彼女に繋がるものであれば何でも――と探し続けた。鼻をひくつかせ、もう一度深く息を吸い込み、森の匂いを嗅ぎ分ける。

「彼女は...

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