第五十四章

フレイヤ視点

私は、自分の肩にもたれて安らかに眠るイーサンの顔を、信じられない思いで見つめた。ついさっきまで、彼の唇は貪るように私を求め、アルファ特有の威圧感で私の体を閉じ込めていたというのに……次の瞬間には、もうぐっすりと眠り込んでいたのだ。

「本気? キスの途中で寝落ちするなんて……」信じがたい事態に、私は思わずそう呟いた。

私は試しに体重をずらし、彼の下から抜け出そうとしてみた。だが、無駄だった。眠っているというのに、彼の腕は鉄のような強さで私の腰を抱きしめ、胸元にしっかりと縫い止めている。私は彼の肩を軽く押してみた。

「ちょっと、離してよ」私は呟きながら、少し強めに押しのけた。...

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