チャプター 60

ノア視点

ムーンシェイド病院の夜勤は、普段なら静かなものだ。特に俺が担当している超常病棟は。俺は疲れ切った目をこすり、文字が滲んで見え始めたカルテに目を細めた。あと三時間。今はただ、眠りたかった。

突然、外の騒ぎが俺の思考を中断させた。荒げた声、慌ただしい足音、誰かが入り口付近で患者が倒れたと叫んでいる。

俺はペンを放り出し、疲れなど忘れて音のする方へ駆け出した。夜勤の看護師はすでに到着しており、数人のスタッフが人だかりを作っている場所へ車椅子を押して向かっているところだった。

「道を空けてくれ」人混みをかき分けながら俺は叫んだ。

そして、彼女の姿が目に入った。

フレヤだ。冷たいコ...

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